不屈の名作『シェルブールの雨傘』の映画感想です。
戦争で引き裂かれた悲しい恋の物語。
ミシェル・ルグランの美しい音楽がより一層、切なさを感じさせます。
『シェルブールの雨傘』は同タイトルの曲も有名でジャズミュージシャンに良く演奏されます。
今回は映画・曲、両方の『シェルブールの雨傘』の魅力に迫ります(^^)/
※後半からネタバレを含みます。
あらすじ(内容紹介)
フランス北西部の港町シェルブールで、ささやかだけれど美しい恋を育む自動車修理工の若者ギイと傘屋の少女ジュヌヴィエーヴ。恋に恋する年頃のジュヌヴィエーヴに未亡人の母夫人は心配顔。出かけるたびに嘘をつきながらもジュヌヴィエーヴはギイと出会う時間が嬉しかった。だがある日、アルジェリア戦争の徴集礼状がギィに届き、二人は離れ離れとなってしまい―。
(Amazonより引用)
予告編は映画中の「歌」の部分を抜粋したのではありません。
本映画の台詞は全て「歌」にのせられます。
本ブログでも『オズの魔法使い』『サウンド・オブ・ミュージック』『マイ・フェア・レディ』『メリー・ポピンズ』と色々、ミュージカル映画を紹介してきましたが、全て台詞が歌になっているのは本映画『シェルブールの雨傘』だけです。
なのでミュージカル色がかなり強いのでそのことは観る前に留意しておいた方が良いでしょう。
ストーリーは簡単に言ってしまえば「戦争が引き裂く恋の物語」です。
恋愛ものには障害がつきもの。古き良き映画はその障害を「戦争」としているものがたびたびありますね。
本ブログでも紹介した『カサブランカ』もそうでしょうか。
戦時中を舞台にした不屈のラブロマンス映画を彩るJAZZスタンダード曲
こちらはハードボイルドな「大人な恋愛映画」です。
『サウンド・オブ・ミュージック』も戦争が障害としてできます。
こちらは恋愛映画とは違いますが・・・。
強いて言うなら家族愛か(^^;)
『シェルブールの雨傘』は若い二人の悲恋映画です。
戦争によって離れ離れになってしまう二人。
別れ際に永遠の愛を誓い合うのですが・・・。
続きは是非、本編をご覧ください。
『シェルブールの雨傘 』名演奏の紹介5選
ミシェル・ルグラン作曲の音楽は本映画の魅力の一つです。
特に映画と同タイトル『シェルブールの雨傘』は特に人気のある曲で、ジャズミュージシャンによく取り上げられます。
今回はおすすめを5曲紹介します(^^)/
その① Manhattan Jazz Orchestra
ピアノのデビッド・マシューズ率いるマンハンタン・ジャズ・オーケストラの演奏。
フルートの美麗な音色が切なく歌ってますね。
ヴァイオリン、チェロの弦楽器の編成の相性も良いです。
その② McCoy Tyner
ジョン・コルトレーンのバンドでも活躍したマッコイ・タイナー率いるピアノトリオの演奏です。
あまりマッコイ・タイナーらしくない!?演奏かも知れませんが上品に仕上がってますね。
その③ 堤智恵子
日本人サックスプレイヤーです。
ジャズバーで色んなサックスプレイヤーの演奏を聴いてきましたが、堤さんの演奏は一言で言い表すと「見栄え」がします。
勿論、いい意味で(^^;)
選曲も有名なジャズのスタンダード曲や邦楽のカバーなど親しみやすいものが多いので初心者が聴いても「上手い!」「凄い!」演奏というのがわかりやすいのです。
その④ Stochelo Rosenberg
「シェルブールの雨傘」はギターの音色とも相性が良いですね。
ストーケロ・ローゼンバーグは切れ味鋭い速弾きギターが魅力のプレイヤーですが、バラードの演奏も素敵ですね。
その⑤ 森川七月
女性ボーカルです。
低音の深みのある歌声が切なさを醸し出してます。
森川さんのアルバムは何枚かもってますが、この人は明るい曲より、切ない曲の方が合っている気がするな~。
映画のネタバレあらすじと感想
本映画は完全なミュージカル映画になっており、台詞は歌にのせられます。
3部+エピローグという構成です。
第1部 旅立ち
舞台はアルジェリア戦争真っ只中のフランス。
1部では若い二人の主人公が愛し合う様子から戦争への招集がかかり離れ離れになるところまでの物語。
1部のストーリーのポイントとしては
- 自動車整備工ギィ(20歳)とジュヌヴィエーヴ(17歳)は恋人同士で結婚を誓い合った仲である。
- ギィは将来はガソリンスタンドを経営して暮らそうと話している。
- ギィは病身の伯母エリーズと、ジュヌヴィエーヴは雨傘店を営む母親のエムリ夫人と暮らしている。
- エムリ夫人は若すぎる二人の恋愛をあまりよく思っていない。
- エムリ夫人の雨傘店が経営難に陥ったとき、宝石商のローラン・カサールに助けられる。
- ギィに戦争への招集令状が届く。その夜、二人は結ばれる。
- ギィは叔母の世話を幼馴染のマドレーヌに頼む。
- シェルブール駅での別れ際、二人は永遠の愛を誓う。
本映画の主要登場人物とその相関関係がこの1部で網羅されおり、後の伏線となります。
第2部 不在
2部はジュヌヴィエーヴの葛藤の話。
ギィの子供も身ごもり、永遠の愛も誓いながらも、手紙を出してもギィからの返事がなく、不安を覚える、ジュヌヴィエーヴ。
その間、宝石商のローラン・カサールに求婚されます。
ローラン・カサールはお金持ちで誠実で・・・。
結婚するには最適の男性。
ジュヌヴィエーヴは葛藤しますが、ローラン・カサールの「お腹の子供も自分の子供として育てる」という熱意に負け結婚を受け入れます。
そしてジュヌヴィエーヴ達はパリに移住します。
恋人と離れ離れになり、子供まで身ごもっている・・・。
しかも、母子家庭で家にはあまり余裕がない・・・。
女性側の不安は相当なものでしょう。
そして、そこにチャラ男ならともかく誠実な男性が現れて・・・。
夢より現実を選ばざる得なかったのでしょう、ジュヌヴィエーヴの心境の変化が良く描かれています。
第3部 帰還
3部はギィの話。
ジュヌヴィエーヴが結婚したことを知り、堕落した様子から立ち直るまでを描きます。
足を負傷を負いながらも2年ぶりに戦場から帰ってきた、ギィ。
しかし、すでにジュヌヴィエーヴは別の男性と結婚し、この町にいないことを知り、ショックを受けます。
自暴自棄に陥ったギィは会社とも喧嘩して辞め、酒と娼婦に溺れる自堕落な生活を送ります。
立ち直るきっかけとなったのは祖母の死。
祖母の世話をしてくれていた幼馴染のマドレーヌに「一緒に暮らしてほしい」と頼み、叔母の遺産でガソリンスタンドを経営することに・・・。
当初の夢だったガソリンスタンドを経営することになったギィ。
永遠の愛を誓い合ったかつての恋人、ジュヌヴィエーヴはいないけど・・・。
マドレーヌとはその後、結婚し、何とか新しい人生のスタートを切れそうな感じでこの部は終わります。
エピローグ
ガソリンスタンドの経営も起動に乗り、順調なギィのもとにジュヌヴィエーヴの車がやってきます。助手席に娘を乗せて・・・。
何年かぶりに偶然、出会った二人。
しかし会話は至って淡々、そう淡々・・・。
お互いのことを責めることもなく、懐かしむこともなく。
「(娘)に合っていく?」というジュヌヴィエーヴが聞くがギィは首を振る。
やがてジュヌヴィエーヴの車は去って行き、ギィは買い物から帰ってきた自分の妻子を迎える__。
エピローグは深いシーンだと思います。
一見、そっけない感じもしますがきっと色んな感情が交差してのことでしょう。
悲恋を乗り越え、今はそれぞれの幸せを手にしている二人。
それでもハッピーエンドとは言い難い切なさが残るシーンだと思います。
まとめ
やはり映画と音楽というのは深く結びつくものだと思います。
途中で「歌って踊る」シーンが入る「ミュージカル映画」が苦手な方もいらっしゃると思いますが・・・。
最近では『ラ・ラ・ランド』も流行ってます。
もし『ラ・ラ・ランド』を観て「ミュージカル映画」って良いな~と思った方は是非、古き良き名作も観てみてください(^^)
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