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『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』【おすすめ映画】これはジャズ映画か!?

「ジャズな映画」・・・。

そんな風に感じさせる映画です。

ストーリーに直接的にジャズに関連する要素はないのですが(^^;)

菊池凛子を有名にした『バベル』で知られるメキシコのアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督、『バッドマン』のマイケル・キートン主演。

そしてドラマー、アントニオ・サンチェスのサウンドで楽しむブラックコメディ。

第87回アカデミー賞最多の4冠に輝いた本作品をジャズ好きの私なりの解釈で紹介したいと思います(^^)/

※後半にネタバレを含みます。

目次

あらすじ(内容紹介)

第87回アカデミー賞(R)で最多4冠!(作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞)全編1カットかと見紛う長回し映像で圧倒的なリアル感と臨場感は必見!!かつてスーパーヒーロー映画で大スターとなったが仕事も家族も失った落ち目の俳優が、復活を賭け奮闘する様をブラックユーモア満載で描く、人生再生のドラマ。

(Amazonより引用)

今は落ち目で、 かつては『バードマン』というヒーロー映画で脚光を浴びた主人公リーガン・トムソン(マイケル・キートン)が自ら金を出し、脚色・演出・出演を行う舞台で再起を賭けるという物語です。

「長回し映像」でまるで1シーンで撮ったかの様。

主人公のドキュメンタリー映画のようなリアリティがあります。

故に主人公が時に幻想を見ているようなシーンはそれが映画内での「現実か非現実」なのか戸惑う面もあります(^^;)

コメディ要素もありますが、あくまでもブラックユーモアの要素が強く「笑える」感じでなく、落ち目の俳優を「嘲笑う」感じで物語が進んでいきます。

先述した「現実と非現実」をストーリーが進むにつれ主人公の「妄想」だと気づかされます・・・。

何だか切ない気持ちになります(>_<)

このまま切ない感じで終わるのか、あるいは再起が叶うのか・・・。

是非、本作品をお楽しみください(^^)

※ここから下はネタバレです。

 これから観る方はご注意ください。

本映画の核となる3つのドラマ

ドラマその① 主人公の再起はなるか・・・

主軸のドラマはここ。

かつて(1980年代後半)はヒーロー映画で一世を風靡した主人公、リーガン・トムソンがブロードウェイの舞台を成功させ、再起となるのか!?というところです。

序盤から最後までトラブル続きです。

トラブルの原因になるのが出演者の男優の怪我により、代役としてきた俳優、マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)の存在。

彼は生粋の舞台役者で演技力は折り紙つきですが、自己中心的で主人公とウマが合いません・・・。

おまけにギャラが相当高く、主人公が自らの家を売ってお金を工面しなければいけない苦境に立たされます。

プレビュー公演(本演開幕の前に試験的に行う公演)が始まってからも他の役者の勝手な行動に振り回されたり、ちょっとしたトラブルから「ボクサーショーツ1枚」の状態で劇場から締め出され、パンイチで街を歩かなければいけなくなったり・・・。

それでも何とか舞台を成功させようと奮闘するのですが、精神的にはかなり参っている様子。

 主人公はこんな時、顕著に「妄想」に駆られます。どこからとなく声が聞こえ、超能力があるかのように物を破壊したり、空を飛んだりします。

その声の正体は「過去のもう一人の自分」、バードマンなのです。

バードマンに囁かれ、変な妄想に駆られている様はいつまで経っても過去の栄光から抜け出せないこと意味しているのでしょう。

しかし傍から見ると「精神崩壊寸前の老人」のように写り、見てられないところもあります(>_<)

ここまで追い詰められて果たしてトムソンの再起は叶うのでしょうか・・・。

ドラマその② 家族の絆

トムソンは娘を付き人としてます。

娘はもとドラッグ中毒者で施設から出てきたばかりという設定で、実際に映画内でもまだドラッグ中毒から完全に立ち直れていない描写もあります。

娘との関係は上手くいってません。

トムソンがスターだった頃から家庭を省みなかったことが原因で娘は何かと父に反発的です。

また妻にも離婚を突き付けられてます。

トムソンは何とか舞台を成功させ、家族の絆を取り戻したいと願ってますが果たして上手くいくのでしょうか・・・

ドラマその③ 映画俳優と舞台俳優

怪我をした俳優の代わりに実力派舞台俳優マイク・シャイナーがやってきます。

演技力は確かで、台詞合わせの段階でトムソンを唸らせ、ギャラが4倍でも「是非、契約してほしい」思わせるほどの実力者ですが、正確は傲慢で目立ちたがり屋。

また落ち目で元映画スターのトムソンをどこか冷ややかな目で見てます。

舞台というのはステージでの失敗が許されず、確かな演技力が必要され実力派俳優が多いにも関わらず、映画に比べると地味な存在。

逆に映画俳優は実力がイマイチでもビジュアルが良ければ世界的なスターになれ、収入も桁違い。

このような面はあるので映画で通用しなくなったからと舞台に再起をかけるトムソンに対して「舞台を甘く見るな!」という想いがあるのでしょう。

トムソンは再起の舞台をブロードウェイに選んだのも理由があります。

『バッドマン』で映画スターになる前のこと。

役者を目指したきっかけとなったカーヴァーとの思い出です。

高校の時の話。

当時、演劇部に所属していたトムソンの演技を見てカーヴァーが「誠実な演技だった」と書いた紙ナプキンを渡してくれ50年間、ずっと持ち歩いてます。

因みカーヴァーとは今回の舞台の演目となっている『愛について語る時に我々の語ること』の原作者です。

トムソンが再起にこの演目を選んだのも、この「カーヴァーとの思い出」があったからこそ。

そんな想いから舞台俳優としてもう一花咲かせたいと切実に頑張るトムソン。

しかしマスコミや舞台評論家たちの反応は冷ややかなものです。

新聞では「バードマンが必死にもがいて羽ばたこうとしている」と揶揄されます。

舞台の評価はこの人の記事で決定されると言われるほどのカリスマ舞台評論家からは元映画スターということだけで毛嫌いされ「舞台も観ずに酷評する」と断言され、打ちのめされるトムソン。

果たしてトムソンの舞台は評価されるのでしょうか・・・。

ジャズな映画と言われる理由

アントニオ・サンチェスのBGM

超一流ジャズドラマーのアントニオ・サンチェスが叩き出すドラミングが映画の随所に効果的に使われています。

決められた譜面というより、アントニオ・サンチェスがシーン一つ一つの場面の臨場感をくみ取り、即興で演奏されいると思います。

まさにジャズドラムの神髄を味わえる作品でもあります。

 監督の撮影に対するこだわり

普通は、撮影後に撮った映像を暗室で操作したり修正したりして半年を過ごすが、本作ではそれができない。普通なら半年かけて理性的な判断を下しているのに、その場で決定しなければならない。その代わりになるのは直感だ。どちらかと言えば、即興のジャズ演奏に似ている。本作にはジャズの要素があった

(オフィシャルインタビューより)

たくさんのカットを撮り、後でつなぎ合わすのが通常の映画ですが、本作は「長回し」というあたかも全編1カットのように撮影された作品。

このような撮影方法を採用した理由としては下記の通り語られてます。

この物語はリーガンの視点で描くべきだと考えたからだ。人々には彼の身に起こった出来事を体験してほしいと思った。彼が自分の凡庸さに向き合うまでの、入り組んだ、閉所恐怖症的な、不可避の経験を見てほしかった。それを感じてもらう最良の撮り方は、カメラを究極の形で彼の視点にすることだった。

(オフィシャルインタビューより)

 作り手のこだわりから大胆なアイデアを実践し、直観的な判断も必要となる・・・。

こんなところがジャズのアドリブ(即興演奏)に通じるところがあり「ジャズな映画」と思わせるところかと(^^;)

ジャズを題材にした映画『セッション』との対比

先に紹介した『セッション』という映画。

セッション』おすすめジャズ映画【むしろジャズをあまり知らない人におすすめしたい】

こちらは若手ジャズドラマーと鬼教師が繰り広げる狂気の物語でした。

今回紹介した『バードマン』と同じく第87回アカデミー賞で多くの賞を分かち合った映画です。

この2つの映画、日本(主にネット)では賛否に分かれる映画です。

『バードマン』に関する賛否
  • 実験的な撮影方法が臨場感が素晴らしい
  • 作り手のきめ細かなこだわりがよい
  • BGMがすばらしい
  • 話がわかりにくい
  • 長回しは観ていて疲れる
  • マニアック過ぎる
『セッション』に対する賛否
  • ラストシーンが感動した
  • シモンズの熱演がすごい
  • 一流になるための努力が垣間見れる
  • ジャズの魅力が伝わらない
  • ジャズ評論家から酷評された
  • スポ根みたい

簡単にまとめるとこんな感じでしょうか(^^;)

私見ではどちらも面白かったのですが

『セッション』の方が万人向けだと思います。

細かい音楽的な部分やジャズの本質的な面で気難しいジャズの評論家やマニアの方々からは酷評を受けておりますが・・・。

『ジャズを題材』にしたというだけであって、作り手としては教師と生徒の間で繰り広げられる狂気の世界をつくりたかったという意図なのでしょう。

ですので「ジャズとは!?」という本質的なところをついていくとツッコミどころがあるのは仕方ないところかと思います。

そのツッコミどころが気になる人も少ないと思いますが(^^;)

一方の『バードマン』はとても奥の深い作品で作り手のこだわりが明確にわかる作品。

この手の映画は万人向けはしませんが、評論家や目の肥えている映画通の人からリスペクトされる作品でもあります。

時に観ている方を「おいてけぼり」にしてしまうほどに、こだわった臨場感はまさに『ジャズな映画』と言われる所以でしょう。

映画を観たあと、色々語り合うならこの映画かも知れません。

まとめ

この年のアカデミー賞作品は私にとっては魅力的でした。

「ジャズ」という切り口で語れる作品が2作品もあるのですから(^^;)

『バードマン』は多少、難解で観る人を選ぶ作品かも知れませんが、後からじわじわくる作品でもあります。

何も考えずに観ても楽しめますが「出演者のバックボーン」や「キャスティングや撮影方法など監督のこだわりなど」を知っておくとさらに奥深く楽しめる映画です(^^)

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