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西加奈子最新作 【 i (アイ)】 おすすめ書籍の読書感想

直木賞作家 西加奈子の最新作。

世の中の災難・・・。

幸せな生活を送る自分・・・。

一見、何の不自由ない家庭環境に育った一人の女性の内面を繊細に描いた

「自分探し」の物語。

※後半、ネタバレがあります。

目次

直木賞作家の最新作

2016年11月29日に発行。

2015年『サラバ!』で直木賞を獲ったに西加奈子さんの最新作。

抽象的で色鮮やかなではありますが何かしら「混沌」とした印象を与える装丁。

帯には又吉直樹さんと中村文則さんの推薦文が載ってます。

残酷な現実に対抗する力を、

この優しくて強靭な物語が与えてくれました。

――又吉直樹

読み終わった後も、ずっと感動に浸っていました。

なんてすごいんだろう。

この小説は、この世界に絶対に存在しなければならない。

――中村文則

これだけでの情報ではまだどんな物語が全く想像がつきませんね(^^;)

「混沌」「残酷な現実」「優しくて強靭」「ずっと感動に浸っている」「この世に絶対に存在しなければならない」・・・。

こんなところが本書の内容に関連するキーワードになりそうです。

新刊コーナーで、まず鮮やかで意味深な装丁に目が留まり、こんなキーワードから「どんなストーリーなんだろう・・・」などと考えていたら手に取ってました(^^;)

あらすじ(内容紹介)

Amazonの紹介文

『サラバ! 』(直木賞受賞)から2年、

西加奈子が全身全霊で

現代(いま)に挑む衝撃作!

「この世界にアイは存在しません。」

入学式の翌日、数学教師は言った。

ひとりだけ、え、と声を出した。

ワイルド曽田アイ。

その言葉は、アイに衝撃を与え、

彼女の胸に居座り続けることになる。

ある「奇跡」が起こるまでは――。

「想うこと」で生まれる

圧倒的な強さと優しさ――

直木賞作家・西加奈子の

渾身の「叫び」に

心揺さぶられる傑作長編!

(Amazonより引用)

主人公はワイルド曽田アイ。

ワイルドな名前ですね(^^;)

彼女の子供時代から20代半ばくらいまでの半生を描いた作品となります。

この物語を主人公の内面を覆いかぶすと「なんて幸せな人生だろう」そんな印象を与えるほど、ある意味、恵まれた半生です。

(幸せと感じる基準は人それぞれなので「ある意味」です)

どんな想いを持って彼女は半生を過ごしていたのか・・・。

ここからは少し内容について触れていきます。

多少のネタバレを含みますのでご注意ください。

ただ物語の核心には触れないように留意します(^^)

悪人が出てこない幸せな環境での内なる葛藤

主人公はシリア人で物心がつかない頃に養子に出されています。

両親はアメリカ人と日本人。共に人格者で裕福な家庭です。

主人公のアイに対しても全身全霊で愛してる様子が伺えます。

学生時代は日本で過ごします。

特徴的な容姿からクラス内ではちょっと浮いた感じではあるのですが、クラスメイトは軒並みやさしく接してくれます。

そして何よりも親友と呼べる人もいます。

大人になると好きな人ができ、結ばれます。

・・・ざっとこんな風に書くと何の問題もないただの恵まれた人って感じですね(^^;)

しかし、アイは自分がシリア出身の養子であるということをとても気にかけています。そして幸せ過ぎる環境に罪悪感すら感じている・・・。

この主人公、アイの内なる葛藤が核として物語は進みます。

とても幸せな環境なのに幸せと思えず、むしろ罪悪感を感じてしまう主人公には読む人にとって想うところも様々だと思います。

この世界にアイは存在しません

これは高校の授業の話。数学の先生が生徒たちの興味を引こうと存在しない数字「虚数の  i (アイ) 」の話をしたという件です。

しかし、前述通り、とても思慮深いアイは自分と重ね合わせ、自身の存在意義を問うようになります。

このキーワードは物語の随所に出てきます。

果たしてアイは自分の存在意義を見つけることができるのか____。

本書でお楽しみいただければと思います(^^)

世の中の災害や戦争について想うこと

本書に実際にあった災害や事故といった出来事が実際のエピソードとして出てきます。

ニューヨークの同時多発テロから東日本大震災、各地(主人公の出生地であるシリアなど)の戦争・・・。

このような悲惨な出来事が起こった際は当事者でない自分は「どういう想いを持ち」「どう行動する」のが良いのか・・・。

また、それが「自分にとって身近な話」「遠い国の話」どちらのケースでも同じ想いを持てるのか・・・。

とってもデリケートで、ある意味正解なんてないこの問題に向き合っている物語です。

帯の又吉氏の推薦文。

残酷な現実に対抗する力を、この優しくて強靭な物語が与えてくれました

この一文はきっと又吉氏が主人公のアイがこの問題に向き合い、導き出したことに対しての想いなのかなと感じます。

まとめ

物語の当事者達が不幸やトラブルに遭い、それをどう乗り越えるか・・・。

このようなストーリーの小説はたくさんありますよね。

本書は世界で悲惨な出来事に遭っているたちに対する想い、そして幸せな自分に対しての罪悪感・・・。

関節的なのですが、故に心を揺さぶられる・・・。

なかなか興味深い、内容でした。

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