他の女を連れ、恋人に別れを告げるとき、どんなドラマが待っているのか・・・。
人気作家、伊坂幸太郎が送る連作短編小説です!
あらすじ(内容紹介)
星野一彦の最後の願いは何者かに〈あのバス〉で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げること。そんな彼の見張り役は「常識」「愛想」「悩み」「色気「上品」──これらの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。なんとも不思議な数週間を描く、おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー
5股をしていた恋人たちに別れを告げる短編小説
主人公の星野一彦(以下、星野)はとある事情により5人の恋人に別れを告げなければいけないことになります
「5人の恋人と別れを告げる・・・」とありますが過去に付き合っていた5人と言う訳ではありません。5股です。
主人公の人物像としては「困った人を見過ごせない」「計算高い生き方ができない」「鈍感」・・・。5股をしているからといってプレイボーイとして描かれている訳ではありません。
恋人がいるいない関係なく、好きな人ができれば見過ごせず、気づけば5股をしていた・・・みたいな感じです。悪びれなく5股をできるというのはある意味、たちが悪いかもしれませんね(^^;)
彼の見張り役として同行する大女、繭美を婚約者に見立て、一人ずつ会いに行きます。
一人の女性の話ごとに1章+エピローグ的な章の短編6章からなる小説です。
簡単に言うと5回分の修羅場です(^^;)
まぁ、別れ話を切り出された女性の反応も様々でそこにドラマがあるんですけど・・・。
ふわっとした舞台設定
星野は持前の鈍感さ故に借金を背負い、且つある組織から反感を買っている模様。
そのおかげで近日中に「あるバス」でどこに連れ去れていく模様・・・。
こんなふわっとした背景がこの物語にあります。
見張り役の繭美もこの組織の一員です。繭美の口から「あるバス」について抽象的に語られるシーンはあるものの核心には迫っておりません。
この辺りの設定、気にはなりますが本書においては「主人公が恋人たちに別れを告げなければいけない」という理由をつくるためだけの設定ということでしょうか。
著者にとってあまり深堀する必要性を感じなかったのかもしれません。
或いは謎にしておいた方が読み手の想像を駆り立てるので良いと感じたのかもしれませんね。
大女、繭美の存在
アブドラ・ザ・ブッチャーと評されるほどの大女で金髪ハーフの女性。粗暴な性格でトラブルメーカー。彼女のハチャメチャな言動が本書のストーリーにも大きな影響を与えており重要な役回りです。
当初は主人公や他の登場人物を引っ掻き回す、傍若無人キャラですが最後のシーンでは・・・。
まとめ
今回、読んだきっかけとなったのは単純にタイトル『バイバイ・ブラックバード』に魅かれました。
『バイバイ・ブラックバード』は同タイトルでJAZZの超スタンダード曲があります。
コード進行も比較的、単純でジャムセッションの初心者の課題曲としてもよく使われる曲です。
こちらはトランぺッターのマイルス・デイビスの演奏のものですが本書の冒頭に、「暗い店内には静かなジャズトランペットが流れている」という件がありましたが思い浮かんだのがこの曲です。
5章目でも、この曲の歌詞と本書のストーリーがリンクする場面があり、JAZZファンとてはニンマリです。
伊坂作品はその昔「アヒルと鴨のコインロッカー」「重力ピエロ」「死神の精度」と立て続けに読んだきり、久しぶりでした。
「5股」「別れ話」「バスに連行」「借金」・・・。題材は決して爽やかでなくむしろドロドロしておりますが、重苦しくなく読み進められ、エンディングも流石と思いました。
続編がでるようなことがあれば、ぜひ、読みたいですね!
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