三浦しをん作の2012年、本屋大賞受賞作。
十数年にも亘る辞書編纂に関わる人たちが繰り広げる感動の人間ドラマを堪能できます!
あらすじ(内容紹介)
玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説。 (アマゾンより引用)
モノづくり通じた人間ドラマ
辞書一筋37年。大手総合出版社の玄武書房の辞書編集部の古株、荒木の定年に伴い、後釜として新しい辞書『大渡海』の編纂メンバーを探すというところから物語が始まります。苦労して探すと思いきや荒木と同じく辞書編集部の西岡の情報であっさり見つかります(^^;)
これなら探す気になればもっと早く見つかっていたのでは・・・。
とまぁ、この辺りは急展開で話が進み、主人公の馬締(まじめ)が登場します。
ここからは辞書編集部の面々たちを中心に「辞書の編纂」を巡って人間ドラマが繰り広げられます。本書内で物語の終盤まで辿り着く月日は十数年間・・・。
私自身、実際に近い業種で働いている故にこの苦労はとてつもないだろうなとヒシヒシと感じました。
各登場人物の「辞書」に対する想いを描く短編構成
物語を通しての主人公は馬締ですが、同い年で辞書編集部の先輩の西岡正志、後々にファッション雑誌の編集部から転属になる岸辺みどり等『大渡海』の編纂に関わるメンバーの短編小説のような構成にもなってます。
彼らは性格や配属になったきっかけは様々ですが、それぞれに辞書編纂に対する想いや苦悩があり、それでも自分なりに完成に向け貢献しようとするひた向きな姿勢が随所に描かれており、心を打たれるものがあります。
ちょっとした恋愛要素も
馬締とその相手役として登場する林 香具矢のエピソードを始め、各登場人物の恋愛エピソードもちょいちょい入ってきます。
ただし本題の「辞書編纂」の邪魔にならない程度です。
恋愛がメインの小説だと当然ながら恋愛要素で物語の山場をつくらなければいけないので大きな恋の障害を設定したり、恋愛模様を複雑にしたり、ドロドロした感じになったりしますが本書は良くも悪くもあっさりしてます。
私的にはドロドロ系の恋愛要素は苦手なのでこの程度が良いかなと(^^;)
まとめ
私自身が印刷業界に従事しており、出版社とは近い関係にあるので親近感を持って読めました。辞書の案件の携わったことはありませんが(^^;)
それにしても十数年・・・。もちろんその間には頓挫している期間も含まれているとは思いますがこれだけの期間をかけて「一つのものを作り上げる」物語は同業種の私でなくてもきっと胸の打たれるものがあると思います。
余談ですが舞台となっている神保町、九段下、飯田橋あたりは実際に出版・印刷関係の会社が多く、私自身も馴染みのある地域です。ただ本書はこのページ数で十数年間のエピソードが入ってますのでおのずと駆け足で(特に中盤以降は)話が進む感があり、情景描写をそこまで詳細にしていないのが少し残念(^^;)
本書は映画化されているようですね!
映画ではちゃんとこの辺りの地域が舞台になっているのかな?
ちょっと気になっております(^^;)
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