気品ある行動、洗練された佇まいからデューク(公爵)のニックネームを持つデューク・エリントン。自身のバンド、デューク・エリントン楽団を率い、長年に亘りジャズシーンの第一線で活躍しました。またジャズ史上、きっても大作曲家でもあり、1500曲以上もの曲を世に送り出しました。
今回はデューク・エリントン(楽団)の曲でジャズスタンダート曲を知ってもらいたいと思います。
デューク・エリントンについて
子どもの頃から公爵と呼ばれる
1899年、ワシントンで生まれます。ホワイトハウスで執事をしている父を持ち、子どもの頃から洗練された服装と気品のある言動からクラスメイトからデューク(公爵)と呼ばれていました。
子どもの頃からあだ名が公爵ってすごいですね(^^;)
小学校でピアノをはじめ、高校生の時にはすでに高度な音楽理論を学びはじめたそうです。大作曲になる基盤はここで作られた訳ですね。
デューク・エリントンが脚光を浴び始めたのは2度目のニューヨーク進出の時。「ケンタッキー・クラブ」のハウスバンドでピアニストをやっていた頃です。
バンドリーダーのエルマー・スノーデンが辞めた後はリーダーとしてバンドをけん引しました。
そしてケンタッキー・クラブで名を挙げたデューク・エリントンは一世一代のチャンスに巡り合います。
名声を不動にしたコットンクラブ
それはニューヨークの高級クラブ「コットンクラブ」との契約です。
1927年、ハウスバンドのリーダーが亡くなったことをきっかけに経営者は後任としてデューク・エリントンとキング・オリヴァーを候補に挙げました。
しかしデューク・エリントンは同時期にマネージャーのミスでフィラデルフィア劇場とも契約していたため、痛恨のダブルブッキングでチャンスを棒にふりかけましたが・・・。
なんとマネージャーがマフィアの力を使ってフィラデルフィア劇場の方の契約を反故にしたので無事にコットンクラブと契約ができました(^^;)
敗れたキング・オリヴァーはこの後、陽の目をみることがなく暗い晩年を過ごしたのでこの出来事は二人の明暗を分けたといっても過言ではないと思います。
コットンクラブの客は富裕層、インテリ層の白人がほとんどで芸術性の高い、デューク・エリントンの音楽は瞬く間に人気になりました。
富裕層に人気を得たエリントンは不況でビッグバンドが落ち目になった時代にも比較的、安定した音楽活動をしています。
長年、支えてくれたバンドメンバーたち
会社にたとえても離職率が高い会社はあまり良いとはいえませんよね(^^;)良い会社なら長く働きたいと思うものです。
その点、デューク・エリントン楽団は長い間、数多くのミュージシャンが在籍したことでも有名です。
いつの時代も盤石の体制で演奏をしてきた訳です。
バンドメンバーだけでなく作曲家・編曲者のビリー・ストレイホーンは長年にわたりデューク・エリントンのパートナーとしてエリントンサウンドを支えてきました。
超有名スタンダード曲『A列車で行こう』も実際は彼の作曲です。
デューク・エリントン(楽団)の曲でスタンダード曲を知る
A列車で行こう
https://youtu.be/cb2w2m1JmCY
CMでもよく使われますし、ブラスバンドでもよく演奏されるジャズスタンダート曲の中でも屈指の人気曲です。
シンプルのコード進行なのでジャムセッションの入門曲としても重宝されています。
聴く方でも演奏する方でもジャズの入門としては最適の1曲です。
キャラバン
https://youtu.be/YkLBSLxo5LE
どこかエキゾチックな感じがする1曲。
数年前にアカデミー賞を賑わしたジャズ映画『セッション』でもこの曲が取り上げられました。
こちらの記事も是非、ご参照ください。
『セッション』おすすめジャズ映画【むしろジャズをあまり知らない人におすすめしたい】
この映画のクライマックスで演奏されたのが『キャラバン』です。
Cジャム・ブルース
https://youtu.be/gOlpcJhNyDI
至極、シンプルなブルースなのですがデューク・エリントンが作曲したと知るとどこか知的が感じがします(^^;)
こんな単調なメロディでも奥の深さを感じされるデューク・エリントンの音楽センスに脱帽です。
『Cジャムブルース』は超絶テクニックをもつ銀盤の皇帝、オスカーピーターソンの演奏も有名です。
シンプルな曲ゆえにオスカーピーターソンの演奏が際たちます。
オスカーピーターソンの記事もありますので是非、こちらもご覧ください。
オスカー・ピーターソンおすすめ名盤5選【超絶テクニックとエンターテインメント性を兼ね備える銀盤の皇帝】
サテンドール
https://youtu.be/TrytKuC3Z_o
親しみやすいメロディでジャズスタンダート曲として人気の高い曲です。
1953年にデューク・エリントンとビリー・ストレイホーンの共作で発表され、1958年、ジョニー・マーサーによって歌詞が付けられました。
『サテンドール』とは「サテンの人形」という意味でサテンとはなめらかでスベスベしていて光沢のある生地のことのようです。
このような生地で作られているので「魅惑的な人形」という意味合があり、奥の深い歌詞のようです・・・。
気になるかたは検索してみてください(^^;)
スイングしなけりゃ意味ないね
1931年の作品。まさにスイングジャズ全盛の時代につくられた一曲です。
デューク・エリントン楽団の最初の専属歌手であるアイヴィ・アンダーソンのボーカルでヒットしました。
今でもジャズシンガーに良く歌われています。
私が先日、ライブに入った日本のジャズシンガー中島紅音さんも良く歌われてます。
https://youtu.be/iNHrnJAp654
ライブレポもあります。
荻窪ROOSTER ( ルースター)【東京ジャズバーめぐり③】中島紅音ライブ
イン・ア・センチメンタル・ムード
最後はバラードを。
1935年の作品。こちらもスイングジャズ全盛の時代の曲です。この頃のジャズはアメリカの国民的音楽でしたので楽曲もポピュラーな感じです。
動画ではエラ・フィッツジェラルドのボーカルをご紹介していますが、サックスでもよく演奏されています。
有名どころではジョン・コルトレーンでしょうか。モードやフリーで怒涛のようなアドリブを演奏すると思いきやこの曲のような甘美なバラードには歌心溢れる演奏をできるのがジョン・コルトレーンの凄いところです。
ジャズバラードとしてはド定番の1曲ですので是非、覚えておいてください。
デューク・エリントンおすすめ名盤
A列車で行こう
1940年代前半の名演奏を集めた1枚。
デューク・エリントンの代表的な曲も数多く収録されていますので入門編としては良いと思います。
若くして亡くなった天才ベーシスト、ジミー・ブラントンやコールマン・ホーキンスやレスター・ヤングと並び、当時のテナーサックス奏者において第一人者だったベン・ウェブスターが在籍していた超豪華なバンドメンバーでの演奏が堪能できます。
デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン
オーケストラではなくテナーサックス奏者、ジョン・コルトレーンと共演した作品を1枚紹介します。
1962年といえばジョン・コルトレーンがモードジャズで怒涛のブロウを魅せ、フリーに傾向しようかという時期です。
しかしこのアルバムでは甘い演奏を聴かせてくれます。
実はこの作品、ジョン・コルトレーンのサックスのマウスピースの調子が悪くて仕方なしにバラード中心のアルバムを出すことなったうちの1枚だとか(^^;)
当時のジョン・コルトレーンはすでにトップミュージシャンでしたがデューク・エリントンは60歳を越えた重鎮です。
きっと緊張したことでしょう・・・。
コルトレーンの演奏が長めですがエリントンの音楽性に寄り添った感もあり、二人の良さが味わえる作品です。
メリー・ポピンズ
ディズニー映画『メリー・ポピンズ』の楽曲をデューク・エリントン楽団が取り上げました。
デューク・エリントンは大作曲家で相棒のビリー・ストレイホーンと1500に及ぶ作曲を手掛けてきたので、自身のオリジナル曲だけでもかなりのレパートリーがあるはずですが・・・。
ディズニー音楽のように誰でも親しみが持てるような曲を題材にデューク・エリントン楽団のサウンドを堪能するのも良いと思います。
ザ・ポピュラー・デューク・エリントン
デューク・エリントンのアルバムの中でも有名な1枚です。
「まずは気軽にレンタルで~」と思ってらっしゃる方はこの1枚に出会える可能性が一番高いと思います。
このアルバムは1966年時点での自身のバンドのヒット曲を再アレンジして発表したものです。
デューク・エリントンのアルバムの中では新しい部類に入り、音源も良く聴きやすいと思います。
最初に紹介した『A列車で行こう』と収録曲がかぶりますが時期が違いますので聴き比べても良いと思います。
Amazon『Prime Music』で聴けるデューク・エリントン
- Take The A Train
- デューク・エリントン & ジョン・コルトレーン
Amazonのプライム会員だと上記、2つのアルバムが無料で聴けます。
今回、ご紹介したアルバムは1つ含まれてます。
オーケストラでのアルバムが1枚、ジョン・コルトレーンとの共演のアルバムが1枚あるので取り急ぎデューク・エリントンの演奏を堪能するには良いと思います。
まとめ
芸術性とエンターテインメント性を兼ね備えたデューク・エリントンサウンド。
流行りの音楽に飽きてきた人は一度、聴いてみてください(^^)
以上、「デューク・エリントンでジャズスタンダート曲を知る【おすすめ名盤紹介】」でした。
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