元祖ジャズテナーサックスのスターと言えばこの二人。
レスター・ヤングとコールマン・ホーキンス。
お互い全く違う演奏スタイルですが後世のジャズミュージシャンに大きな影響を与えた二人です。
今回はレスター・ヤングとコールマン・ホーキンスをおすすめ名盤とともにご紹介します。
コールマン・ホーキンスとレスター・ヤングについて
ジャズの創成期においてフロント楽器といえばコルネット(トランペット)とクラリネット。
テナーサックスはそんなに目立つ楽器ではありませんでした。テナーサックスの音域は中低音のため、どちらかいうとベースラインを演奏する伴奏楽器としての役割が強かったのです。
そんなテナーサックスをジャズの花形楽器に押し上げたのがコールマン・ホーキンス。
1923年にフレッチャー・ヘンダーソン楽団に入団したコールマン・ホーキンスはテナーサックスという楽器の魅力を存分に引き出した男性的で艶のある音色、そして明朗なスイングリズムで頭角を現し、1930年代にはスターミュージシャンとなります。
当時のテナーサックス奏者のほとんどはコールマン・ホーキンスのスタイルを目指しました。
このうような経緯からコールマン・ホーキンスは「テナーサックスの父」と呼ばれます。
ほとんどがコールマン・ホーキンスのスタイルで演奏し、コールマン・ホーキンスの演奏こそが王道だった時代に別の演奏スタイルを模索していたテナーサックス奏者がいました。
その人がレスター・ヤングです。
レスター・ヤングは1934年、コールマン・ホーキンスがフレッチャー・ヘンダーソン楽団を退団したことにより、後釜として同楽団に入団します。しかしレスター・ヤングの演奏スタイルは柔らかい音色で繊細に演奏するもので、男性的で豪快な演奏をするコールマン・ホーキンスの後釜としては決して評価が高いものではありませんでした。
レスター・ヤングが脚光を浴び始めたのはフレッチャー・ヘンダーソン楽団を辞め、カウント・ベイジー楽団に所属していた時期です。
軽快なスイングサウンドが売りのカウント・ベイジー楽団とは相性が良く、「プレス(社長)」というニックネームがついたのもこの頃。
レスター・ヤングのリリカルで節制の利いた演奏スタイルは当時のスイングジャズとは一線を画したものでしたが、やはり当時はコールマン・ホーキンスのような豪快な演奏が主流でした。
しかし、レスター・ヤングの演奏スタイルは後に1940年代にビ・バップを提唱するチャーリー・パーカーや1950年代のクールジャズを代表するミュージシャンたちに多大なる影響を与えることになります。
レスター・ヤングとコールマン・ホーキンスのおすすめ名盤
おすすめ名盤①【BODY & SOUL】byコールマン・ホーキンス
アルバムタイトルにもなっている『ボディ&ソウル』はコールマン・ホーキンスの演奏の中でも有名です。
まだモダンジャズが現れる前の演奏でクラシカルな印象もありますが、端正な音色が際立ち、ソロもモダンジャズの演奏と比べシンプルで聴きやすいかと思います。
『ボディ&ソウル』ようなバラードを低音且つ端正な音色で哀愁漂わせながらの演奏はテナーサックスならではの魅力です。
おすすめ名盤②【ジェリコの戦い】byコールマン・ホーキンス
1962年に録音されたライブアルバム。
1920年代から活躍するコールマン・ホーキンスですからこの頃はもう大御所ですね。
スタンダート曲『 オール・ザ・シングス・ユー・アー』『マック・ザ・ナイフ』等を年齢を感じさせないブロウで聴かせてくれます。
ライブ音源故か当時若手のピアニスト、トミー・フラナガン等をバックバンドに従え、当時の人気絶頂のソニー・ロリンズにも負けない斬新なフレーズも飛び出します。
おすすめ名盤③【レスター・ヤング・メモリアル・アルバム】byレスター・ヤング
名盤というかお得盤ですね(^^;)
ジャズスタンダート曲として超有名な曲が目白押しって訳ではありませんが・・・。
レスター・ヤングの全盛期の演奏を堪能できるアルバムです。
晩年のレスター・ヤングは酒とドラッグで心身ともにボロボロになりすっかり衰えてしまいますので全盛期の演奏は貴重です。
コールマン・ホーキンスの演奏と聴き比べていただければわかると思いますがソフトな音色で自由奔放な演奏が特徴です。テナーサックスをはじめ管楽器の演奏の魅力の一つとして「音が大きく鳴る」というのがあります。
下手な奏者は「音が鳴らない」人が多いのでデカい音を鳴らせるというのはそれだけで魅力の一つになり得ます。
しかしレスター・ヤングは敢えて節制の利いたクールなサウンドで勝負していた訳です。
後のクールジャズに大きく影響を与えた演奏を是非、ご堪能ください。
おすすめ名盤④【Musical Romance】byビリー・ホリデイ&レスター・ヤング
ジャズシンガー、ビリー・ホリディとの共演アルバムです。
この二人はカウント・ベイジー時代に出会い、お互いの音楽性に共鳴しあった仲です。
レスター・ヤングはビリー・ホリディのことを「レディ・ディ(気品のある淑女)」と呼びビリー・ホリディはレスター・ヤングのことを「プレス(社長)」と呼び、尊敬し合ってました。
お互い晩年は決して良いコンデションで演奏を残せていないので30年代後半の二人の絶頂期の演奏も収録されている本作品は聴いて損はないと思います。
おすすめ名盤⑤【プレス・アンド・テディ】byレスター・ヤング
※Amazonプライム会員の方は無料で視聴できます。
本ブログの他の記事でも幾度か紹介させていただいたアルバムです。
レスター・ヤングは戦時中、兵役に出された際に白人の奥さんをもらったという理由から上官に酷くいじめられたそうです。
戦後もそのストレスを引きずり、酒とドラッグに溺れた日々を送っていたので晩年は決して良い演奏を残せていないのですが、この『プレス&テディ』に関しては評判が良いです。
選曲も聴きやすいものが多く特にアップテンポで演奏された『All of Me』は私は大好きです。
テディ・ウィルソンのピアノも気品があり、レスター・ヤングのクールな演奏にピッタリ合います。
まとめ
モダンジャズが苦手な方でもコールマン・ホーキンスのようなクラシカルなジャズなら気に入っていただけるかも知れません。
ウエストコーストジャズを代表するクール系のジャズが好みの方はレスター・ヤングもきっと好みに合うはず。
「ジャズの最初の1枚」に選ぶかはどうかは別にして・・・。
もし他のミュージシャン伝いでもジャズテナーサックスに興味を持っていただいたら是非、一度は聴いていただきたいご両人です。
以上、「レスター・ヤングとコールマン・ホーキンス【おすすめ名盤】ジャズテナーの歴史はこの二人から始まる」でした。
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