スイングジャズやモダンジャズ、フリージャズやフュージョン・・・。
ジャズと一括りにいってもその演奏スタイルは時代によって様々。
今回は簡単ではありますが、ジャズの起源や歴史について記事にしたいと思います。
ジャズのはじまり
ジャズ発祥の地はニューオーリンズとされています。
ニューオーリンズは17~18世紀にかけてヨーロッパ各国の植民地争いの舞台となり、その結果、様々な人種・文化が入り混じる地域となりました。
その一例がクレオールの存在。
クレオールとは白人と黒人のハーフのことです。当時はまだ黒人差別が残っていた時代ですがニューオーリンズでは白人と黒人の子どもは「白人」と見なされ高等な教育も受けることができたのです。
音楽もその一つ。黒人が白人の西洋音楽を学ぶ機会が生まれました。また南北戦争後は身分制度が崩壊し白人同様、特権階級的な扱いだったクレオールも働かなくてはいけなくなり、音楽で生計を立てる者が増えてきました。
このような経緯から黒人特有の音楽性と西洋音楽の交わりが深くなり、新しい音楽が生まれました。
これがジャズの始まりと言われます。
ジャズを創ったと言われるサッチモ
ジャズの歴史の中で最初のスターと言えばサッチモことルイ・アームストロング。
今年(2017年)流行したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』でもジャズ好きの主人公、セブから「ジャズをつくった男」と紹介されてました。
トラペット演奏の実力は勿論のこと、独特なダミ声を活かしたボーカルで長くジャズシーンで活躍します。
今ではジャズボーカリストなら普通にやっているスキャット(リズムのってドゥビドゥバと歌うやつ)もルイ・アームストロングが最初にやり始めました。
1920~30年代、ルイ・アームストロングはニューオーリンズ、シカゴ、ニューヨークと亘って活躍します。彼のいるところこそが「ジャズの中心」と言われるほどの影響力をもったミュージシャンでした。
スイングジャズで国民的音楽に
1930年代はスイングジャズ全盛の時代。
世界大恐慌から少しずつ、回復しはじめる1930年代半ば頃に人気のピークを迎えます。
クラリネット奏者のベニー・グッドマン、トロンボーン奏者のグレン・ミラーなどの白人ミュージシャンが自らのビッグバンドを従え、数々の大ヒット曲を生み出します。
ジャズのスタンダード曲『シング・シング・シング』『ムーンライト・セレナーデ』はこの時期に作曲されます。
この時期のジャズは明るくスインギーなリズムが特徴。
ダンスミュージックとして作曲されたものが多く、難解なイメージがなく聴きやすい曲が多いです。
多少、古典的な印象を受けるかも知れませんが(^^;)
スイングジャズについては別記事がありますので是非、こちらもご覧ください。
ジャズの黄金時代、モダンジャズ
1940年代に入ると第二次世界大戦の影響もあり、景気が悪くなり大所帯のビッグバンドが衰退していきます。
そんな中、譜面通りに演奏するのに飽きたミュージシャン達がレギュラーの演奏の後に夜な夜な即興演奏(アドリブ)を繰り広げ、腕試しをするようになります。
その中心にいたのがアルトサックス奏者のチャーリ・ーパーカー、デイジー・ガレスピー達です。
彼らのセンスと演奏技術に基づいたアドリブ演奏は、瞬く間にジャズシーンを席巻しました。これがビ・バップの始まりであり、モダンジャズの始まりでもあります。
今までは国民的音楽という側面が強かったジャズもこの頃より芸術性の高い音楽と変貌します。同時にマニアックな音楽となるのですが(^^;)
この後、トランぺッターのマイルス・デイビスやテナーサックスのジョン・コルトレーン達により、ビ・バップからハード・バップ、そしてモードジャズに進化を遂げます。
このビ・バップからモードジャズまでをモダンジャズと言います。
モダンジャズの特徴としてはやはり芸術性が高くなった分「難解」なイメージが持たれるようになったこと、そしていわゆるジャズの名盤と呼ばれるアルバムはこの時期にリリースされているものが一番多く、「ジャズの最初の1枚」はこの時代のアルバムが選ばれることが多いことです。
ですので一般的にジャズが小難しい印象を持たれるのは致し方ないかもしれません(^^;)
比較的、聴きやすいアルバムをチョイスしているつもりですが、私のブログで紹介させていただいているのもこの時代のアルバムが多いです。
モダンジャズについて別記事がありますので宜しければこちらもご覧ください。
多様化するジャズ
1960~70年頃からはジャズの演奏スタイルが多様化していきます。
モダンジャズの後期ではモードジャズというコード進行にとらわれない演奏スタイルが確立されましたが、さらに演奏の自由度を高めたのがフリージャズ。
いわゆる決まり事が存在しない完全即興です。
メロディもリズムまでも自由なので・・・。
聴く側としては難解を極める演奏スタイルですね。
聴く側の気持ちは置いておいて(^^;)
アルトサックスのオーネット・コールマンが1960年頃からこのフリージャズを演奏し始め、他のミュージシャンに衝撃を与えました。
演奏を極めたミュージシャンたちは自身のセンスを極限まで試したいために演奏に自由を求める傾向にあるのか、フリージャズは当時、既に大物ミュージシャンだったジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズにも大きな影響を与えます。
ジョン・コルトレーンはオーネット・コールマン同様にフリージャズの旗手となり、ソニー・ロリンズは自身の音楽を見つめ直すために失踪しました(^^;)
どんどん難解な方向に進んでいく一方、ボサノバやジャズロックと呼ばれる演奏スタイルが出てきたのもこの頃です。
1963年にはテナーサックス奏者のスタン・ゲッツがリリースした『ゲッツ/ジルベルト』がグラミー賞を獲得する等、大衆人気を得ます。
1969年にはマイルス・デイビスがジャズとロックに融合を試みたアルバム『ビッチェズ・ブリュー』がヒットし1970年以降はフュージョンの時代が到来します。
フュージョンと原点回帰
1970年代はジャズフュージョンが台頭します。
ジョー・サヴィヌル、ウェイン・ショーターが率いるウェザー・リポート、チック・コリア率いるリターン・トゥ・フォーエバーが世界の音楽シーンで活躍します。
この頃のジャズはアコースティックなサウンドから脱却し、エレクトリックサウンドが主流となります。
ロックと融合されたクロスオーバー的なサウンドなので当然といえば当然ですが、ジャズっぽさはあまり感じられないとは思います(^^;)
これはこれで良い音楽ですが古き良きモダンジャズが好きな人の中には好まない人もいるようです。
一方、ベテランミュージシャンの復活や若手ミュージシャンの台頭でモダンジャズが再び脚光を浴びます。
トランぺッターのウイントン・マルサリスは19歳でアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのメンバーに抜擢され、非凡な演奏で瞬く間に注目を浴びました。
ハードバップの時代から活動しているジャズ・メッセンジャーズも1970年代はフュージョンに押され気味でしたが息を吹き返します。
一時はリタイアしたジャッキー・マクリーンやアート・ペッパー等のベテラン勢も再び音楽活動を始め、再評価されました。
1990~2000年代に入るとジャズはさらに多様化し、市場でいえばニッチな方向に進んでいきます・・・。
まとめ
現代において特に日本ではジャズがオリコンヒットチャートを賑わすようなことはありませんが・・・。
都内に住んでいるとジャズバーなど生演奏を聴ける場所が幾つもあります。
大きなホールで聴くライブではなく10~20名くらいの規模の店で生演奏を堪能できるので身近に感じます。
ジャズは勿論、音楽なので本来は「聴く」ものですが、少しでもジャズに興味を持っていただけたのでしたら、こんな歴史を知ることも良いかと思います。
以上、「ジャズの歴史を簡単におさらいする(1900~1980年頃)」でした。