日本で最も知名度の高いジャズミュージシャンの一人、ビル・エヴァンス。クラッシクを素地とした繊細で叙情的な演奏が特徴で「ジャズ界のショパン」と呼ばれていました。
またそれまでのピアノトリオの演奏とは一線を画したインタープレイ(三相交流型)を実践し、次世代のミュージシャンに大きな影響を与えました。
今回はそんなビル・エヴァンスをおすすめ名盤とともに紹介します。
ビル・エヴァンスについて
出生名:William John Evans
生誕:1929年8月16日
出身地: ニュージャージー州
担当楽器:ピアノ
ビル・エヴァンスの主な経歴
年号 | 内容 |
1929年 | ニュージャージー州で生まれる。子どもの頃よりクラシックを学び、10歳の頃からジャズに興味を示す。 |
1946年 | 南ルイジアナ大学ニューヨークのマネス音楽院で楽器演奏、作曲、音楽理論を学ぶ。 |
1954年 | 本格的にジャズミュージシャンとして活動を始める。1956年に初のリーダーアルバム「New Jazz Conceptions」を発表するが売り上げは不振に終わる |
1959年 | マイルス・デイビスのリーダーアルバム「カインド・オブ・ブルー」にピアニストとして参加。ハードバップからモードジャズへの進展に大きく貢献した。 |
1959年 | ドラマーのポール・モチアン、ベーシストのスコット・ラファロとピアノトリオを結成。インタープレイでピアノトリオの新たな可能性を見出す。「ポートレイト・イン・ジャズ」・「エクスプロレイションズ」・「ワルツ・フォー・デビイ」および同日収録の「サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード」はリバーサイド4部作と言われる。この4部作の収録が終えた11日後にベースのラファロが事故死してしまう。 |
1966年 | エディ・ゴメスを新しいベーシストとしてメンバーに迎える。以降1978年までビル・エヴァンスの音楽を支えることとなる。 |
1969年 | マーティー・モレルをドラマーとして迎える。エディ・ゴメス、マーティー・モレルとのトリオはマーティー・モレルが1975年の抜けるまで続き、歴代最長となる。 |
1979年 | ベースのマーク・ジョンソン、ドラムのジョー・ラバーバラで最後のトリオ(ラストトリオ)と呼ばれるバンドを結成。 |
1980年 | 体調不良に見舞われながらも演奏活動を続けたが9月15日に死去。死因は肝硬変と出血性潰瘍による失血性ショック死である。 |
優雅で上品なジャズの代名詞
クラッシクを素地とした美しく独創的な演奏は明るくノリノリのスイングジャズとは一線を画した優雅で上品な印象。
「大人っぽいオシャレな音楽」の代表とも言えるでしょう。
ビル・エヴァンスは日本での人気が軒並み高く、上の動画『ワルツ・フォー・デビィ』は日本で一番、売れたアルバムのタイトル曲です。この曲はジャズの中では超有名ではありますが、『枯葉』や『A列車で行こう』みたいな多くのミュージシャンが演奏している曲ではないので、ジャズを聴かない人はご存知ないことも多いかと思います。
ビル・エヴァンスの演奏があまりにも完成度が高いせいか、あまり他にミュージシャンにカバーされてない曲なので、そのことが一般的な知名度がそこまで高くない要因の一つでしょうか。
しかし一度聞くとキャッチーなメロディ、甘美な演奏、そしてピアノ・ベース・ドラムが共鳴し合うインタープレイに瞬く間に魅了されることでしょう。
ジャズの歴史を辿ると創成期の花形楽器といえばトランペットやサックス等の管楽器になります。ピアノ・ベース・ドラムはリズムセクションを担う脇役に過ぎませんでした。
1950年代に入るとジャズピアニストのバド・パウエルが圧倒的な演奏技術で一気にピアノをジャズの主役に引き上げます。この時期にピアノ・ベース・ドラムのいわゆるピアノトリオは脚光を浴びますが、この段階では「ピアノが主役でベースとドラムはリズム担当の脇役」といった感じでした。
1960年代、ビル・エヴァンスがインタープレイを提唱し、ピアノトリオの在り方が変化します。従来のソロパートとリズムパートの仕分けにこだわるより、メンバー同士が創造的な演奏を提示することにより独創的なサウンドを作り出すことに重きをおいた形式を取りました。
ビル・エヴァンスが提唱したインタープレイはハービー・ハンコックやロン・カーター等など以後のミュージシャンに大きな影響を与えました。
私の勝手な印象ですがビル・エヴァンスの容姿からして生真面目で堅実なイメージを持ってましたが、実際はドラッグの常習犯でもあり、兄の自殺や家族との別居など結構、荒れていたそうです。マイルス・デイビスのバンドもドラッグが理由でクビになったそうですね(^^;)
マイルス・デイビスのバンドをドラッグでクビになったといえばジョン・コルトレーンもそうですが、彼はセロニアス・モンクのバンドに加入後、麻薬断ちに成功しますが、ビル・エヴァンスは生涯、麻薬と縁が切れなかったそうです・・・。
ビル・エヴァンスが活躍したのは1950年代後半~1980年と幅広いですが、やはり印象に残るのはリバーサイド4部作でしょうか。
「ポートレイト・イン・ジャズ」「ワルツ・フォー・デビイ」はジャズの最初の1枚として良く取り上げられる名盤です。聞き覚えのあるスタンダート曲を美しい演奏で聴かせてくれるので私もジャズの入門には最適だと思います。
クラッシクよりの優雅で上品なジャズを聴きたいと思った時はビル・エヴァンスを選べばまず間違いないでしょう。
ビル・エヴァンスのおすすめ名盤①
ポートレイト・イン・ジャズ
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1959年発表のリバーサイド4部作の最初の作品。
『枯葉』『いつか王子様が』『ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ』などのスタンダート曲でビル・エヴァンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンのインタープレイが堪能できる名盤です。
ジャズの最初の1枚としてよく紹介されています。
こちらのアルバムにはモノラルとステレオの各バージョンの『枯葉』は収録されてますので是非、聴き比べてください(^^)
- 降っても晴れても
- 枯葉 (テイク1)
- 枯葉 (テイク2) (MONO)
- ウィッチクラフト
- ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ
- ペリズ・スコープ
- 恋とは何でしょう?
- スプリング・イズ・ヒア
- いつか王子様が
- ブルー・イン・グリーン
- ブルー・イン・グリーン (別テイク) (ボーナス・トラック/MONO)
ビル・エヴァンスのおすすめ名盤②
ワルツ・フォー・デビイ
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続いてリバーサイド4部作からの紹介となりますが(^^;)
やはりこのアルバムは外せません。
アルバムタイトルにもなっている『ワルツ・フォー・デビィ』の「デビィ」は姪っ子のようです。2歳の姪っ子にワルツを捧げるなんて粋なオジサンですね(^^)
本アルバムは『ワルツ・フォー・デビィ』に注目されがちですが1曲目に収録されている『マイ・フーリッシュ・ハート』も良いです。「愚かなり我が心~」と歌うラブバラードを優雅に演奏されてます。
先にも述べましたがジャズの初心者の方でビル・エヴァンスに興味を持たれた方は先に紹介した『ポートレイト・イン・ジャズ』かこの『ワルツ・フォー・デビィ』を選べばまずは間違いないと思います。
- マイ・フーリッシュ・ハート
- ワルツ・フォー・デビイ
- デトゥアー・アヘッド
- マイ・ロマンス
- サム・アザー・タイム
- マイルストーンズ
- ワルツ・フォー・デビイ (別テイク) (ボーナス・トラック)
- デトゥアー・アヘッド (別テイク) (ボーナス・トラック)
- マイ・ロマンス (別テイク) (ボーナス・トラック)
- ポーギー(アイ・ラヴズ・ユー、ポーギー) (ボーナス・トラック)
ビル・エヴァンスのおすすめ名盤③
スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス
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スタン・ゲッツの記事でも紹介しましたアルバムですが・・・。
スタン・ゲッツのクールテナーとビル・エヴァンスの優雅なピアノの相性がピッタリの1枚です。
管楽器と組むとピアノはどうしても伴奏担当と脇役になりがちですが、本アルバム『スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス』はイントロを長めに演奏してくれるのでビル・エヴァンスのピアノも充分、堪能できます。
名演奏揃いのアルバムですがビル・エヴァンスの演奏でいうと『バッド・ビューティフル』がおすすめです。
私はスタン・ゲッツも好きなのですがこの曲ばかりは冒頭から始まるビル・エヴァンスの演奏をずっと聴いていたくなります。
- ナイト・アンド・デイ
- バッド・ビューティフル
- ファンカレロ
- マイ・ハート・ストゥッド・スティル
- メリンダ
- グランドファーザーズ・ワルツ
- カーペットバガーのテーマ (CD追加曲)
- WNEWテーマ・ソング (CD追加曲)
- マイ・ハート・ストゥッド・スティル (別テイク/CD追加曲)
- グランドファーザーズ・ワルツ (別テイク/CD追加曲)
- ナイト・アンド・デイ (別テイク/CD追加曲)
ビル・エヴァンスのおすすめ名盤④
インタープレイ
ピアノトリオでの演奏でインタープレイをメジャーにしたビル・エヴァンスがトランペットのフレディ・ハバードとギターのジム・ホールを迎えてクインテットでのインタープレイに挑んだ作品です。
クインテット編成なのでさすがにエヴァンス色は薄くなりますが1、2曲目が『あなたと夜と音楽と』『星に願いを』とキャッチーな曲なのでジャズ初心者の方も入りやすいと思います。
- あなたと夜と音楽と
- 星に願いを
- アイル・ネヴァー・スマイル・アゲイン
- インタープレイ
- ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
- 苦しみを夢に隠して
- アイル・ネヴァー・スマイル・アゲイン (別テイク) (ボーナス・トラック)
ビル・エヴァンスのおすすめ名盤⑤
パリ・コンサート
ビル・エヴァンスの死後に発表された作品。1979年のライブの音源ですので死の直前、満身創痍での演奏だったことでしょう。
バンドメンバーはマーク・ジョンソン、ジョー・ラバーバラでラストトリオと呼ばれる面子です。
『マイ・ロマンス』『アイ・ラヴ・ユー・ポーギー』『ビューティフル・ラブ』等、ビル・エヴァンスの演奏スタイルに合う、美しいスタンダート曲がチョイスされてます。
インタープレイを愉しむというよりビル・エヴァンスの魂の演奏を聴くアルバムだと思います。
- きみの愛のために
- クワイエット・ナウ
- ノエルのテーマ
- マイ・ロマンス
- アイ・ラヴ・ユー・ポーギー
- アップ・ウィズ・ザ・ラーク
- オール・マイン(ミーニャ)
- ビューティフル・ラヴ
- ビル・エヴァンス・インタビュー (ビルと兄ハリー・エヴァンスの談話より抜粋)
Amazon『Prime Music』で聴けるビル・エヴァンス
- 12 Classic Albums 1956-1962
- ワルツ・フォー・デビィ
- 12 ポートレイト・イン・ジャズ
- アイ・ウィル・セイ・グッドバイ
- BILL EVANS TRIO/CONS
- スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス
Amazonのプライム会員だと上記、6つのアルバムが無料で聴けます。
今回、ご紹介したアルバムは3つ含まれてます。
特にリバーサイド4部作のうち2つが聴けるのでAmazonプライム会員の方は気軽にビル・エヴァンスの人気作品を堪能できます。
Amazon Music Unlimitedだとさらに聴けるアルバムが増えます。
無料お試し期間もあるのでチェックしてみてください!
まとめ
ビル・エヴァンスの最初の1枚をおすすめするならリバーサイド4部作で鉄板だと思いますが・・・。
少し幅を持たせるためにスタンゲッツとのコラボのアルバムとかクインテット編成のアルバムも入れてみました。
参考になれば幸いです。
ビル・エヴァンスはクラシックを素地をしたジャズピアニストです。
クラシックピアノに興味がある方は下記のサイトも興味深いですよ!
以上、『ビル・エヴァンスおすすめ名盤5選【美しく独創的なジャズ】』でした。