どこにでもありそうな中小企業を舞台にした池井戸潤の小説。
企業の組織の一員として役割を担い働く、サラリーマンにとって他人事とは思えないストーリーになっています。
あらすじ(内容紹介)
物語の始まりはうだつの上がらないベテラン社員が、エリートでトップセールスマンの若手上司をパワハラで訴えるところから。
臨時パワハラ会議がおこなわれ、若手上司の処遇は大方の予想を裏切り、人事異動となり事実上の降格処分。いずれは懲戒免職になるのではないかと噂されるほど大きなものだった。
誰もが不可解に感じたこの処遇、他に理由があるのか・・・ (byカズロー)
短編小説のつながりで真相が明らかに
本書は会社では欠かせない「会議」の情景を上手く織り交ぜ、8章からなる短編小説のような構成になっています。
章ごとに主人公も違い、一見、それぞれ別の話にも見えます。
しかし、実は一つ一つの話が巧妙に繋がっており、クライマックスでは物語の核となっている大きな事実が浮き彫りになる仕組みになっています。
サラリーマンには他人事とは思えない内容
本書では登場人物各々がサラリーマンとして働く意義について葛藤している姿が良く描かれており、身につまさせる思いです。
私は実際、営業職に従事しているのですが本書内に出てくる台詞
「仕事っちゅうのは、金儲けじゃない。人の助けになることじゃ。人が喜ぶ顔見るのは楽しいもんじゃけ。そうすりゃ金は後からついてくる。客を大事にせん商売は滅びる」
共感でき、そうありたいと心掛けていて仕事に取り組んでいるつもりです。
反面、無謀なノルマ、熾烈な同業他社との価格競争、理不尽な得意先からの値引き交渉、上司や同僚、部下の目、家庭の事情・・・。
本書の登場人物がこのような問題を抱え、間違った方向に進んでいく姿にも完全には否定できません。
私は本書の登場人物のような境遇に立たされた時、正しい道を進めるだろうか?
今でも仕事に関わる人たちに誠実に接しているだろうか?
現実的に不正や犯罪などの極端な出来事にはさすがに遭遇する局面はないでしょうが日頃の些細なことでも組織に対する自身の関わり方や仕事に対する姿勢は問われるいるものだと痛感します。
まとめ
『下町ロケット』や『半沢直樹シリーズ』等、池井戸潤の企業を題材とした小説は良いですね。
本書は小説なので勿論、フィクションなのですが会社員として働く人々にとってリアリティもあり、下手なビジネス書よりも、学ぶところが多かったりします。
特に30~40代のサラリーマンにはおススメできる小説です。
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