「走れメロス」等、近代文学5編を現代版にパロディ化。
お馴染みの京都を舞台に森見ワールド全開の近代文学を堪能できます!
あらすじ(内容紹介)
芽野史郎は全力で京都を疾走した――無二の親友との約束を守「らない」ために! 表題作の他、近代文学の傑作四篇が、全く違う魅力をまとい現代京都で生まれ変わる! 滑稽の頂点をきわめた、歴史的短編集! (アマゾンより引用)
森見ワールドと近代文学のコラボ
京都が舞台で登場人物は大学生・・・。この設定は本著者の鉄板ですね。
森見さんの作品は独特な古風な台詞が特徴ではあるのですが、今回は近代文学のパロディですのでその辺は相性が良いかなと思いました。
タイトルになっている「走れメロス」は森見さんらしく、阿保らしい(良い意味で)設定で娯楽作品として楽しましてくれますし、他の4編は意外とマジメな感じで書かれてます。
原作を知らなくても楽しめるか!?
- 「山月記」著者:中島敦
- 「藪の中」著者:芥川龍之介
- 「走れメロス」著者:太宰治
- 「桜の森の満開の下」著者:坂口安吾
- 「百物語」著者:森鴎外
本書は上記のパロディが掲載されてます。森見さんは作品を選んだ理由として本書のあとがきで「読んでいて何かを書きたくなった作品という基準で選んだ」とのこと。
掲載された作品でとくに惹きつけられたところとして下記のように語ってます。
とくにわたしを惹きつけたのは次のようなところである。「山月記」は虎になった李徴の悲痛な独白の力強さ。「藪の中」は、木に縛りつけられ一部始終を見ているしか他ない夫の苦しみ。「走れメロス」は作者自身が書いていて楽しくてしょうがないといった印象の次から次へと飛びついていくような文章。「桜の森の満開の下」は、斬り殺された妻たちの死体のかたわらに立っている女の姿。「百物語」は、賑やかな座敷に孤独に座り込んで目を血走らせている男の姿である。 (本書あとがきより抜粋)
私は「藪の中」と「走れメロス」しか知りませんでしたが他の作品も興味深く読ませていただくことができました。
特に「桜の森の満開の下」は森見さんの割には珍しく!?ふざけた感が全く無く、意味深な感じで物語が進み、読み終えた後は原作がとても気になりました。(まだ原作を読んでませんがネットで調べる限りではぞっとする話ですね)
私見から言いますと原作を知らなくても楽しく読めるとは思います。どちらと言えば森見さんの作品を1冊は読み、森見ワールドを一度、体験しておいた方が良いと思います。
私は「夜は短し歩けよ乙女」しか読んだことありませんが、登場人物は違えど、舞台は同じなんだなと親近感が沸き、物語にスッと入っていけました。
まとめ
本書に興味を持った方は恐らく「走れメロス」等の近代文学のパロディに興味を持った。或いは森見さんのファンの方だと思います。
後者の方には安心しておススメできますが、前述しましたが森見さんの本を読んだことのない方は本著者の別の本を先に読まれた方が良いかなと思います(京都を舞台したやつ)。「詭弁論部」とか「パンツ番長」とか・・・。結構、アクの強い世界感なので(^^;)
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