編曲を重視し、抑制の利いたアドリブが特徴のクールジャズ。
その演奏スタイルはミュージシャン自らの演奏力と創造力でホットな演奏をするビ・バップに対比してクールジャズと呼ばれるようになりました。
ジャズの聞き始めの頃は創造性に溢れたアグレッシブなジャズよりクールジャズの方が耳になじむかもしれません。
今回はクールジャズのおすすめ名盤を紹介します。
クールジャズとは
クールジャズの元祖は?
クールジャズの元祖はテナーサックス奏者のレスター・ヤングと言われています。
レスター・ヤングは1930年代から活躍していますのでビ・バップの誕生するより前ですが(^^;)
その演奏スタイルは抑制された優しいもので時を同じく活躍していたテナーサックス奏者のコールマン・ホーキンスの豪放な演奏スタイルと良く対比されます。
クールの誕生
1950年にマイルス・デイビスが『クールの誕生』というアルバムを発表します。
マイルス・デイビスは1940年代において主にチャーリー・パーカーのバンドで活躍し、ビ・バップを演奏してましたが同時に新しい音楽性も模索していました。
当時22歳のマイルス・デイビスはニューヨークのクラブ『ロイヤル・ルースト』の共同経営者モンティ・ケイから「きみの好きなメンバーを集めて、好きな音楽をやってみないか」と持ち掛けられ、編曲者ギル・エヴァンス、バリントンサックス奏者で編曲の道を志していたジェリー・マリガンの協力を経て『クールの誕生』の制作にと取り掛かります。
『クールの誕生』はトランペット、トロンボーン、アルトサックス、バリトンサックス、フレンチホーン、チューバ等の9重奏で録音され、一人の編曲者の独奏的なサウンドになるのを避けるため、マイルス・デイビス、ギル・エヴァンス、ジェリー・マリガン、ジョン・ルイスで編曲を分担しました。
演奏は繊細で抑制がきいたクールサウンドで知的で室内音楽的な雰囲気を醸し出していました。
しかし『クールの誕生』ミュージシャン内では注目を集めましたがお客の反応はパッとせず・・・。
マイルス・デイビスは結局、チャーリー・パーカーのバンドに帰ってしまうのですが『クールの誕生』は後のウエストコーストジャズをジャズをはじめ「クール派」いわれるジャズミュージシャンに大きな影響を与えることになります。
ウエストコーストジャズ
1940年代の後半頃、それまでのジャズの中心はニューヨークを中心とする東部でしたが1950年、朝鮮戦争の勃発に伴い西海岸、特にロサンゼルスが軍需要都市化、産業の中心になってきます。
ジャズの中心も次第に西海岸の方に移っていき、この地域で発展してきたジャズをウエストコーストジャズと言います。
西海岸では映画産業が盛んだったことから録音技術に優れ、譜面に強いミュージシャンが多いことからクールジャズをさらに発展させ、スタイリッシュなジャズが作られました。
映画『ブルーに生まれついて』の主人公、チェット・ベイカーもウエストコーストジャズの代表的なミュージシャンです。
クールジャズおすすめ名盤①
タイム・アウト(デイヴ・ブルーベック)
『テイク・ファイブ』があまりも有名な作品。
リーダーのデイヴ・ブルーベックはウエストコーストジャズの代表的なピアニストです。音楽性はヨーロッパの古典音楽に精通していて、ジャズとクラッシクの2面性を持ち合わせているのが特徴です。
ウエストコーストジャズらしい耳に優しく入ってくる明るいジャズを聴かせくれます。
また単調になりがちなクールジャズにおいて多様なリズムを取り入れるためかユニークな拍子の作品を数多く残しました。
アルト・サックス奏者のポール・デスモンドとは長年にわたり、パートナーとして共に活動しました。
本アルバム『タイム・アウト』はクールジャズはもとより、ジャズ全体においても名盤のひとつとして必ず紹介されるほどのメジャーな作品です。
- トルコ風ブルー・ロンド
- ストレンジ・メドウ・ラーク
- テイク・ファイヴ
- スリー・トゥ・ゲット・レディ
- キャシーズ・ワルツ
- エヴリバディーズ・ジャンピン
- ピック・アップ・スティックス
クールジャズおすすめ名盤②
チェット・ベイカー・シングス(チェット・ベイカー)
※Amazonプライム会員の方は無料で視聴できます。
メロディアスなトランペットと中性的な歌声で魅了するチェット・ベイカーもウエストコーストジャズの代表的なミュージシャンの一人です。
力を込めず気だるく歌う様はまさにクール。トランペットともシャカリキに高音を出さず美しいメロディを意識して演奏されているので当時は女性に絶大な人気があったようです。若い頃はイケメンでしたしね(^^;)
女優で歌手でもある原田知世さんもYouTubeで 『私が影響を受けたジャズの1枚』に本アルバム『シングス』を選ばれています。
どの演奏も素敵ですが映画『ブルーに生まれついて』でも聴かせてくれた『マイ・ファニー・バレンタイン』を紹介しておきます。
- ザット・オールド・フィーリング
- イッツ・オールウェイズ・ユー
- ライク・サムワン・イン・ラヴ
- マイ・アイディアル
- アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォー
- マイ・バディ
- バット・ノット・フォー・ミー
- タイム・アフター・タイム
- アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ヴェリー・ウェル
- マイ・ファニー・ヴァレンタイン
- ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
- ザ・スリル・イズ・ゴーン
- アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー
- ルック・フォー・ザ・シルヴァー・ランニング
クールジャズおすすめ名盤③
スタン・ゲッツ・クァルテッツ(スタン・ゲッツ)
スタン・ゲッツはクールジャズのどの系統にも属さない唯一無二の存在。
音楽的にはビ・バップだったりボサノバだったり時代に応じて色々やっているのですが何を演奏させてもクールという印象が強いのでしょうね。
今回ご紹介するのは初期のリーダーアルバムです。
気に行っていただけましたらスタン・ゲッツをフィーチャリングした記事も書いてますので是非、見てください(^^)
- ゼアズ・ア・スモール・ホテル
- アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン
- ホワッツ・ニュー
- トゥー・マーヴェラス・フォー・ワーズ
- 夢から醒めて
- マイ・オールド・フレイム
- ロング・アイランド・サウンド
- インディアン・サマー
- マーシャ
- クレイジー・コーズ
- ザ・レディ・イン・レッド
- 苦しみを夢に隠して
- マイ・オールド・フレイム (別テイク) (ボーナス・トラック)
- ザ・レディ・イン・レッド (別テイク) (ボーナス・トラック)
- プリザヴェーション (ボーナス・トラック)
- イントイト (ボーナス・トラック)
- アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン (別テイク) (ボーナス・トラック)
クールジャズおすすめ名盤④
クッキン!(ズート・シムズ)
スタン・ゲッツと双璧をなす白人クールテナー、ズート・シムズの代表作です。
スイング感が心地よく明るい演奏をする印象です。
長く楽団で演奏していた経験があり、またレスター・ヤングの影響を受けていたことからリーダーバンドを持つようになってからもアンサンブル重視のバランス型の演奏を数多く残しました。
本アルバム『クッキン!』に収録されている『枯葉』『Love for Sale』は有名なスタンダート曲。奇を衒わない実直なズート演奏はジャズ初心者の方でも耳になじむと思います。
- Stompin’ at the Savoy
- Love for Sale
- Somebody Loves Me
- Gone with the Wind
- Autumn Leaves
- Desperation
クールジャズおすすめ名盤⑤
オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット(ジェリー・マリガン)
バリトン・サックス奏者はジャズでは珍しいかもしれません。
テナーサックスよりさらに低音を担当する楽器なのでビッグバンドとかでもソロを取ったりすることは珍しいです。
ジェリー・マリガンはバリトンサックス奏者で且つ編曲にも優れているというなかなか多才な人物だったようです。本アルバム『オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット』はマイルス・デイビスのクールの誕生の影響を受けた作品でアンサンブルが心地よいです。トランペットでチェット・ベイカーも参加してますね。
ウエストコーストジャズの魅力がつまった名盤です。
- バーニーズ・チューン
- ウォーキン・シューズ
- ナイツ・アット・ザ・ターンテーブル
- 木の葉の子守唄
- フレネシー
- フリーウェイ
- ソフト・シュー
- アーント・ユー・グラッド・ユーア・ユー
- アイ・メイ・ビー・ロング
- アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト
- ザ・ニアネス・オブ・ユー
- 二人でお茶を
- アッター・ケイオス #1
- ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー
- ジェル
- ダーン・ザット・ドリーム
- スイングハウス
- アッター・ケイオス #2
クールジャズおすすめ名盤⑥
アート・ペッパー・カルテット(アート・ペッパー)
アート・ペッパーは1950年代はウエストコーストジャズの代表的なミュージシャンの一人として活躍したアルトサックス奏者です。
気品があり叙情的な演奏はまさにクールジャズと呼ぶにふさわしいものでした。
アート・ペッパーといえば『ミーツ・ザ・リズム・セクション』という超名盤がありますが、今回は『Besame Mucho』の名演奏が光る『アート・ペッパー・カルテット』をご紹介させていただきます。
- Art’s Opus
- I Surrender, Dear
- Diane
- Pepper pot
- Besame Mucho
- Blues At Twilight
- Val’s Pal
- Pepper Pot (Alternate)
- Blues At Twilight (Alternate)
- Val’s Pal (Take 1)
- Val’s Pal (Take 4)
- Val’s Pal (Take 5)
クールジャズおすすめ名盤⑦
プレス・アンド・テディ(レスター・ヤング)
※Amazonプライム会員の方は無料で視聴できます。
最期を飾るのはクールジャズの元祖と紹介させていただきましたレスター・ヤングの作品。
レスター・ヤングはビ・バップが誕生する前の1930年代から頭角を現していたテナーサックス奏者。本アルバム『プレス・アンド・テディ』が録音された1956年なので晩年の作品となります。
晩年のレスター・ヤングは酒とドラッグで心身ともにボロボロの状態で全盛期はとっくに過ぎてましたが、本アルバム『プレス・アンド・テディ』は例外的に評価が高い1枚となってます。
やわらかい音色に優しいフレーズ、どこか聴き覚えのあるスタンダート曲・・・。
元祖クールジャズをご堪能ください(^^)
- オール・オブ・ミー
- 恋のとりこ
- ルイーズ
- ラブ・ミー・オア・リーヴ・ミー
- 恋のチャンス
- わが恋はここに
- プレス・リターンズ (CD追加曲)
Amazon『Prime Music』で聴けるクールジャズ
- チェット・ベイカー・シングス
- プレス・アンド・テディ
Amazonのプライム会員だと今回、ご紹介したアルバムの中では上記、2つのアルバムが無料で聴けます。
会員の方は是非(^^)
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無料お試し期間もあるのでチェックしてみてください!
まとめ
他にもクールジャズ系のミュージシャンはいらっしゃいますが今回は比較的、ジャズの初心者の方でも聴きやすいものをチョイスしてみました。
クールジャズは音楽性が高く、ジャズの中では比較的、耳になじみやすい作品も多いのですが音楽性を追求するあまり難解な作品もありますので(^^;)
以上、「クールジャズを聴いてみよう!【クールジャズのおすすめ名盤7選】」でした。