愛称「デックス」で親しまれる巨漢テナー。
その大きな躯体の印象に違わず、テナーサックスらしい野太い音色で豪快な演奏をされますが、そんな中にも優しさ、大らかさを感じさせるのが特徴です。
ちょうどビ・バップ、ハードバップ全盛の1950年代は麻薬でほとんど活動していなかったせいもあり、知名度では他のジャズ・ジャイアンツには劣るかもしれんが、奇を衒わない歌心に溢れる大らかな演奏はジャズの初心者の方にも聴きやすいと思います。
今回はデクスター・ゴードンをおすすめ名盤とともに紹介します。
デクスター・ゴードンについて
生誕:1923年2月27日
出身地: カルフォルニア州
担当楽器:テナーサックス
デクスター・ゴードンの主な経歴
年号 | 内容 |
1923年 | カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれる |
1940年 | ライオネル・ハンプトン、ナット・キング・コールとのセッションでキャリアを積み、リー・ヤング、フレッチャー・ヘンダーソン楽団等のビッグバンドにも短期間だが所属していた |
1946年 | ニューヨークに行き、1947年までサヴォイ・レコードでリーダーとしてレコーディング・セッションを行う。この頃からジャズシーンの第一線で活躍していた |
1952年 | ドラッグが原因で1950年代はほとんど活動せず、1955年に2枚のアルバムを録音したのみ |
1960年 | ブルーノートレーベルでカムバックを果たす |
1962年 | カムバック後、徐々に人気が回復してきた頃、ヨーロッパへ移る。以降、10年以上、ヨーロッパで活躍する |
1986年 | 映画『ラウンド・ミッドナイト』で主演。ドラッグから立ち直ろうとするジャズミュージシャンを演じた |
1990年 | フィラデルフィアで亡くなる。67歳だった |
大らかで歌心あふれるテナーマン
1923年生まれのデクスター・ゴードンはちょうどチャーリー・パーカー(1923年生まれ)とマイルスデイビス(1926年生まれ)の間の世代。1940年代半ば頃には最初のピークを迎えます。
190cmを超える長身で容姿端麗、かつオシャレな人だったようで、そざかしステージ映えしたことでしょう。
本来なら1950年代もジャズシーンをけん引する立場の人だったと思うのですが、ドラッグ問題で・・・。
10年程度、ほとんど音楽活動できずに1960年代を迎えることになります(^^;)
マイルスデイビスが『カインド・オブ・ブルー』でモードジャズを世に送り出し、ジャズの可能性を広げたのが1959年。ですので1960年代はもうビ・バップ、ハードバップの演奏スタイルは下火になってきた時代です。
この頃は同じテナーマンのソニー・ロリンズが音楽性に悩んで失踪したり、ジョン・コルトレーンがモードを経てフリージャズへ傾向したりしています。
ジャズの在り方が変わってきつつある時期でしたがデクスター・ゴードンはある意味、不変。決してテクニシャンではありませんが特徴的な野太い音色で歌心溢れる、「王道の演奏」で徐々に人気が回復していきます。
1950年代はマイルス・デイビスを中心に当時、活躍していたジャズミュージシャン達がコード進行に沿う演奏のマンネリ化に悩みながら切磋琢磨し、ジャズを進化させていった時期です。そんな時代を麻薬で棒にふったデクスター・ゴードンだからこそ逆に不変でいられたのかも知れません(^^;)
1960~70年代はヨーロッパを主戦場に音楽活動を行い、1986年には『ラウンド・ミッドナイト』で主演を務めます。この映画はバド・パウエルやらレスター・ヤングの生涯がモチーフになっていると言われますが、長く麻薬に苦しんだデクスター・ゴードン自身の人生にも共通する部分もあるのでしょう。迫真の演技!?で主演男優賞にノミネートされました。ちなみに音楽を担当したハービー・ハンコックは作曲賞を受賞しました。
途中で長いブランクがあったもののビ・バップの時代から1980年代後半まで活躍したのですから息の長いミュージシャンと言えると思います。
テナーサックスらしい豪快な音色で歌心溢れる演奏といえばソニー・ロリンズを思い出しますが、デクスター・ゴードンはソニー・ロリンズに比べ、哀愁が漂っているというか渋い演奏というか・・・。
天才的な閃きで演奏を繰り広げるタイプではありませんが豪快の中に大らかさ、優しさを感じさせる演奏です。
マイルスデイビスやビル・エヴァンス、ジョン・コルトレーン等に比べて一般的な知名度は低いですが、テナーサックスの音色が好きな方ならジャズ初心者でも自信を持っておすすめできるジャズミュージシャンです(^^)
デクスター・ゴードンおすすめ名盤①
GO
※Amazonプライム会員の方は無料で視聴できます。
デクスター・ゴードンの代表作といえる作品です。
1962年、デクスター・ゴードンがヨーロッパに旅立つ前に録音されたアルバムです。
オリジナル曲の『Cheese Cake』、スタンダート曲でノリの良い『Love for Sale』、バラードの『Where Are You』と聴きどころ満載です。
ジャズ入門として最初の1枚に選んでも期待を裏切らないアルバムです。
キャッチーな曲が多いので聴きやすく、私自身もジャズを聴き始めた当初からのお気に入りの1枚です(^^)
- Cheese Cake
- I Guess I’ll Hang My Tears Out to Dry
- Second Balcony Jump
- Love for Sale
- Where Are You
- Three O’clock in the Morning
デクスター・ゴードンおすすめ名盤②
Ballads
デクスターゴードンがブルーノートレーベルで録音した曲の中でバラードのみを集めたアルバムです。
ジャズの初心者の方にとってはジャズの中でも原曲のイメージをあまり崩さず、且つ美しく演奏してくれるバラードの方が入りやすいのではないかと思います。
同じテナーサックス奏者でバラードを集めたアルバムといえばジョン・コルトレーンのものが有名ですが・・・。
ジョン・コルトレーンのバラードは「甘いバラード」という印象に対して、デクスターゴードンは「哀愁漂う」渋いバラードって感じです。
『i’m a fool to want you』の演奏が泣けます。
- Darn That Dream
- Don’t Explain
- I’m A Fool To Want You
- Ernie’s Tune
- You’ve Changed
- Willow Weep For Me
- I Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry
- Body And Soul (Live)
デクスター・ゴードンおすすめ名盤③
Dexter Blows Hot And Cool
デクスター・ゴードンが麻薬が原因で棒にふった1950年代の数少ない作品の一つです。
こちらのCDにも秀逸なバラードが多く収録されています。
特に『CRY ME A RIVER』は哀愁たっぷりの名演奏です。
最後に収録されている『TENDERLY』も有名なスタンダート曲で聴きやすいと思います。
初心者の方用にジャズバラードを特集した記事でも紹介させていただきました。
- SILVER PLATED
- CRY ME A RIVER
- RHYTHM MAD
- DON’T WORRY ABOUT ME
- I HEAR MUSIC
- BONNA RUE
- I SHOULD CARE
- BLOWIN’ FOR DOOTSIE
- TENDERLY
デクスター・ゴードンおすすめ名盤④
Daddy Plays the Horn
こちらも麻薬に溺れていた時期、1950年代の数少ない作品の一つです。
チャーリーパーカーの演奏で有名な曲『コンファメーション』が収録されています。チャーリーパーカーはこの曲をとても華麗にスピーディーに演奏します。
それに比べデクスター・ゴードンは多少「ゆったり感」がありますが・・・。
この「ゆったり感」もデクスター・ゴードンの演奏の持ち味です(^^;)
『ニューヨークの秋』はデクスター・ゴードンらしい哀愁たっぷりの名演です。
- ダディ・プレイズ・ザ・ホーン
- コンファメーション
- ダーン・ザット・ドリーム
- ナンバー・フォー
- ニューヨークの秋
- ユー・キャン・ディペンド・オン・ミー
デクスター・ゴードンおすすめ名盤⑤
Round Midnight: Original Motion Picture Soundtrack
1986年公開の『ラウンド・ミッドナイト』のサントラ盤です。
タイトルにもなっている『ラウンド・ミッドナイト』をはじめとした名曲が目白押しのアルバムです。
こちらの映画にはデクスター・ゴードンが主演しています。
麻薬から立ち直ろうとするジャズミュージシャンとジャズファンとの心温まる交流を描いた映画なのですが以前の記事で紹介してますので宜しければどうぞ。
映画も素晴らしいですがジャズに興味のない人がみたらどうかな~(^^;)
- Round Midnight
- Body And Soul
- Berangere’s Nightmare
- Fair Weather
- Una Noche Con Francis
- The Peacocks
- How Long Has This Been Going On?
- Rhythm-A-Ning
- Still Time
- Minuit Aux Champs-Elysees
- Chan’s Song (Never Said)
Amazon『Prime Music』で聴けるデクスター・ゴードン
- Go! (The Rudy Van Gelder Edition)
- Both Sides Of Midnight
- ゾーズ・ワー・ザ・デイズ
- North Sea Jazz Legendary Concerts
- Dexter Gordon – Volume 8
Amazonのプライム会員だと上記、5つのアルバムが無料で聴けます。
今回、ご紹介したアルバムは1つ含まれてます。
1番のおすすめ『Go!』が含まれているのでAmazonプライム会員の方は是非、聴いてみてください(^^)
Amazon Music Unlimitedだとさらに聴けるアルバムが増えます。
無料お試し期間もあるのでチェックしてみてください!
まとめ
長きにわたり活躍したジャズミュージシャンは音楽性を追求あまり、時期によって演奏スタイルがガラリと変わることも珍しくありませんが、デクスター・ゴードンはいつの時代も不変。
いつの時代も「デクスター・ゴードン」らしい演奏を聴かせてくれます。
特にバラードの演奏は絶品です(^^)
以上、「デクスター・ゴードンおすすめ名盤5選【豪快さと優しさを併せ持つ極上のテナー】」でした。